英語試験の解説:TOEFL/IELTS/英検/ITP/TOEIC/受験英語の特徴を数値化して説明

2017/06/17

本記事ではTOEFL/IELTS/英検/ITP/TOEIC/受験英語の特徴の数値化と概要を説明する。

各種試験の公式HPのコピー・ペーストではなく、全ての試験を受けた筆者の独自の見方で解説する。

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特徴の数値化については、各英語試験が受験者の英語力をどれだけ伸ばすことに役に立つかに注目して以下の項目を測定する。

評価項目 説明
4技能 Reading、Listening、Speaking、Writingの各セクションの技能を適切にテストしているか
難易度 試験問題自体の難易度 例: 英検準1級<英検1級
実用性 現実の社会に対応した英語か
複合タスク度 読んだ・聞いたことに対して話す・書くなど、複合的な問題を含むか
パターン対策しづらさ 問題パターンから正解を出しづらく、純粋な英語力をテストしているか
教材・参考書の入手し易さ 試験の対策ができる、または学べる教材が流通しているか
平均 上記項目の平均点、点数が高いほど受験者は英語力を伸ばしやすい

各項目は10段階で評価し、レーダーグラフにして視覚的に分かり易く解説する。

各英語試験の位置づけについてはTOEFL iBT、IELTS、英検1級、ITP、TOEIC、受験英語の違いをサッカーに喩えるを参考にしてほしい。

TOEFL iBT®

まずは4技能英語の試験の中でも特に難しいTOEFLから説明する。米国の非営利機関であるETSが作成している。

TOEFL iBT試験の特徴を数値化

TOEFL iBT® 点数 説明
4技能 10 Reading、Listening、Speaking、Writingの4技能試験である。各技能の難易度の差はないとされる
難易度 9 各技能は北米の大学の学術講義、キャンパスでの生活を想定して作られている。ただ、この上にSATがある。
実用性 8.5 アカデミックな英語は高度な会話に必要といえ、実生活で使用度が高くないトピックもある。
ただ、結果的に実生活・学業、ビジネスに使える英語力を正確に測れると言って良い。
複合タスク度 10 読み・聞きしたことについて、話す・書くとあり、各技能のIntegrationを意識して作成されている。
パターン対策しづらさ 8 純粋な英語力がないと高得点は取れない。ただ、Speaking Q3、Q5は定型表現がある程度決まっている。
教材・参考書の入手し易さ 10 ETSの公式教材、その他出版社の対策本ともに豊富にあり、Amazonに在庫も多くある。
平均 9.3 包括的で質の高いテストであるが、試験料が235USドルと高い。(日本、2017年4月)

Official Guide to the TOEFL Testには3回分の練習問題が入っていて、本番とほとんど同じように練習できる。

TOEFL iBT試験の概要

参考)ETSのHPより

TOEFL iBT®︎ではReading、Listening、Speaking、Writingの4技能が試され、日常英語というよりはアカデミック・キャンパスで使用する英語を扱う。一貫した試験の難しさ、質の高さに定評がある。

問題は大学1年生の基礎専門科目で学ぶ題材が多い。

試験時間は約4時間であり、耐久力が必要な試験である。

Reading、Listening、Speaking、Writingで各30点満点の合計120満点である。スコアの利用は日本と海外のほとんどの国・大学でできる。日本の企業では外資系以外ではあまり理解されない。

ReadingとListeningした内容の要約をSpeaking、Writingするという複合問題はTOEFLの大きな特徴であり、他の英語試験にはほとんど見られない。

実際の大学での状況ではListeningが一番多く使う技能であるので、Listeningが試験全体の58%に関わっているのも大きな特徴である。

試験会場では受験者はコンピューターで全ての問題を解く。Listeningのためのヘッドホン、Speakingのためのマイク、Writingのためのキーボードを使用する。

Writingはコンピュータが言語的な特徴、人間が内容や意味を採点する。

月に3〜5回、年間で50-60回実施されているが、一回の試験料が230ドルと高い。結果は試験日から10日で返却される。スコアは2年間有効である。

IELTS

TOEFLと双璧をなす、英国のBritish Councilが作成しているIELTSを説明する。

IELTS試験の特徴を数値化

IELTS 点数 説明
4技能 9 Reading、Listening、Speaking、Writingの4技能試験である。Speakingが日常の話題や出来事についての面接であり、他の技能と比べると易しめである。
難易度 8 日常会話から学術専門的な話題まで出題され、問題の難易度は高い。ただ、Speakingの面接とWriting Task 1の問題は若干易しい。
実用性 10 学術的な話題と日常的な話題の両方を含む。また書籍、雑誌、新聞と様々な切り口から出される。
複合タスク度 6 Speakingは面接形式のためListening技能が不可欠であるが、Reading技能が不要である。一方でWritingはグラフや表、図形の説明問題があるが、Listening技能は必要ない。
パターン対策しづらさ 8 純粋な英語力がないと高得点は取れない。ただ、Speakingの自己紹介と日常生活に関する質問は準備しやすく、またWriting Task 1も要約表現を覚えれば対策を立てやすい。
教材・参考書の入手し易さ 8 公式教材、学習本、対策本も出版されている。ただ、公式教材の流通が良くなく、値段の割には一冊のボチュームが小さく、解説もない。
平均 8.2 総合するとバランスの良く、質の高いテストであるが、試験料が25,380円かかる。(日本、2017年4月)

Cambridge IELTSでは1冊で4回分を練習できて、問題の質は高い。

IELTS試験の概要

試験内容の詳細はIELTS 事前の学習対策は早めに始めよう!を参考にしてほしい。

IELTSは900wordsほどの書籍、専門誌、雑誌、新聞のReadingを1時間で3passagesをすることや次々とディクテーションするListeningなど、英語力だけでなく処理能力・スピードが求められる。

全体的に日常生活やキャンパスの内容が多く、固いアカデミック講義の内容はあまりない。

  • Listeningは日常生活やキャンパス内での会話などが多く、書き取り問題などもある。各問題は2分ほどで、イギリス系英語で聞きにくいと言われるが、訛りは強くない。
  • Reading 新聞・雑誌の記事のようなトピックが多く、長文だけれども読みやすい。
  • Writingは人が全て採点しており採点が厳しいテストと言われている。Q1の要約問題の内容自体は易しめ、Q2のエッセイは固いお題で難しい。
  • Speakingは英検1級の面接とほとんど同じである。面接形式であり、日本人受験者は対応しやすいと言われている。講義の要約などはなく、自分の意見と面接官との議論が中心である。

Listening、Reading、Writing、Speakingの各モジュールのバンドスコアは0~9点であり、0.5点刻みでスコアがでる。

Overallのスコアは各モジュールのスコアの平均であり、中間点(例えば、4.25)は切り上げされるため、TOEFL iBTよりもスコアが出やすいと言われている。

イギリス、オーストラリア、ニュー・ジーランドの学生ビザやカナダの移民の際にはIELTSのスコアが必要である。TOEFLでは不可であるケースである。

受験や留学などで1つのベンチマークであるTOEFL 100点= IELTS 7.0だが、IELTS 7.0の方が取りやすいとされる。

試験料は25,380円であり、ほぼ毎週試験を実施している。試験結果は筆記試験の13日後の16時以降に出る。スコアは2年間有効である。

英検1級

日本でお馴染みの英検1級について説明する。文部科学省の後援を受けている。

英検1級試験の特徴を数値化

英検1級 点数 説明
4技能 7 リーディング、リスニング、ライティング、スピーキングとある。リーディングと比較し、リスニングの問題数は少なめ、ライティングはエッセイのみ、スピーキング5分くらいの面接である。
難易度 7 語彙問題は難しいが、リスニング、ライティングは易しめ、スピーキングも易しめである。
実用性 7 広く社会生活で求められる題材を課している。しかし、実生活で大事なリスニングが短い。
複合タスク度 4 Speakingは面接形式のためリスニング技能が含むが、ライティングにリーディングやリスニングの要素はない。
パターン対策しづらさ 7 純粋な英語力は必要である。ただ、Speakingの面接はパターンが決まっているので対策を立てやすい。
教材・参考書の入手し易さ 9 旺文社から多くの教材、その他出版社からも学習教材が出版されている。ただ、二次試験の面接の教材は少ない。
平均 6.8 リーディング重視のテストである点、語彙問題は異様に難しい点、リスニングとスピーキングの易しい点など、バランスが良くない。

英検の勉強法は過去問の読解、リスニング、ライティングをしっかりこなすことである。

英検1級試験の概要

英検協会HPより

英検1級は語彙問題が非常に難しいのが特徴となっている。

リーディングでは説明文または評論文が出題され、純粋に英語学習の進捗度を測る意図が反映されている。

リスニング、ライティング、スピーキングはリーディング問題と比べると簡単と見なされる。

問題数・点数も語彙・Readingが全体に占める割合は大きかったが、2016年度からリーディング、リスニング、ライティングと技能ごとにスコアを均等に配分することになった。しかし、問題レベルは変わらないため、リスニング、ライティングが得意な受験者に有利に働く。(参考

英検は日本国内とオーストラリアの一部での利用がほとんどである。試験結果は日本の中学・高校・大学の入試や単位認定に広く活用されているが、海外大学出願・ビザ目的での利用はほとんど不可である。

TOEFL 90点、IELTS 6.5を保持していれば英検1級は取れると見なされている。試験結果は生涯有効である。

TOEFL ITP®︎

TOEFL ITPは2006年くらいまで公式テストだったTOEFL PBTと同じ内容である。

TOEFL ITP®︎試験の特徴を数値化

TOEFL ITP® 点数 説明
4技能 5 Listening、Grammar、Readingとインプット中心であり、アウトプット問題を含まない。
難易度 6 Listening、Reading共に短い文章中心であり、その点で聞き・読みやすさがある。文法問題は限りがあるので対策しやすい。
実用性 5 アウトプットを含まず、あくまで英語の基礎力を試している。
複合タスク度 0 そもそもSpeakingとWritingがない。
パターン対策しづらさ 8 パターンを知っていると解ける問題はあまりない。しかし、文法問題は種類に限りがあり、パターン的に回答できなくもない。
教材・参考書の入手し易さ 8 公式教材が1冊しかないが、かつて公式テストだったPBT®形式と同じであるため一般的な出版社から多くの学習教材が出ている。
平均 5.3 あくまで後にiBT®の勉強をするまでの前段階で学習する試験と捉える方が良い。

TOEFL ITP対策は公式問題集をお勧めする。

TOEFL ITP®︎試験の概要

Listening、Grammar、Readingのみであり、インプット量だけを試す問題である。また、文章はTOEFL iBTと同じアカデミックでありつつも1passage 300~400wordsと短い。

そのため、TOEFL iBTでまだ60点に届かない受験者用向けの前段階の試験・学習教材と位置づけられいる。

非公式の参考テストとして、中学、高校、大学などの各教育期間に今でも使用されている。

 TOEIC®︎

さて、日本と韓国の社会人に大人気のTOEIC®︎を説明する。

 TOEIC®︎試験の特徴を数値化

TOEIC® 点数 説明
4技能 4 主流はListeningとReadingのみである。
難易度 4 問題の文章は短く、単語も易しめである。リスニングの会話に間があって聴き取りやすい。
実用性 4 オフィスや日常生活における英語によるコミュニケーション能力を想定している。
複合タスク度 0 SpeakingとWritingがない。
パターン対策しづらさ 7 全体的に問題の質は高い。ただし、Listening、Readingともに慣れれば、目の付け所が分かるようになり、解き易くなる問題がある。
教材・参考書の入手し易さ 10 公式教材、学習本・対策本と豊富に出版されている。
平均 4.8 オフィスや日常会話に限定しており、中難度の英語試験である。

新形式に対応した公式TOEIC問題集である。

TOEIC®︎試験の概要

TOEICはリーディングとリスニングの2技能試験であり、リスニングは45分間・100問、リーディングは75分間・100問と試験時間が2時間と短めである。

また、TOEFLやIELTSと比較すると各問題は短く、そして易しめである。そのため、TOEFL・IELTSからTOEICの転向は容易だが、TOEICからTOEFL・IELTSは難しい。

スコアは5点から495点までの5点刻みで出るが、1問5点という訳ではなく偏差値法でスコアが出る。

多くの日本企業の就職活動で活用されており、一部の日本の学校でも利用が広がっている。外資系企業ではほとんど評価されない。

受験者の8割は日本人と韓国人である。日本人がETSに依頼して作成されたテストだからである。

2016年5月29日より実用的な出題形式に難化した。(詳細

Speaking&Writing(200点満点)もあるがReading&Listeningの受験者の1%ほどしかいない。

試験は年間で10回実施され、1回5,725円である。試験結果は試験日から30日以内に出る。2年間有効である。

大学一般受験の英語試験

日本人にとって馴染みの深い、大学一般受験の英語について説明する。

 大学一般受験の英語試験の特徴を数値化

一般受験英語 点数 説明
4技能 3 基本的にリーディング (読解・語彙・文法)のみ。リスニングまたはライティングを課す試験もあるがかなり少ない。
難易度 3 リーディングのレベルはそれほど高くない。英訳・和訳・要約などは独特の基準があり難しい部分はある。
実用性 2 一般受験の英語だけを学んだだけで英語を使える人を少なくても筆者は見たことない。
複合タスク度 0 SpeakingとWritingが基本的にない。
パターン対策しづらさ 5 発音やアクセントの問題、各大学の毎年の傾向など、範囲が絞れる場合が多い。
教材・参考書の入手し易さ 10 赤本東進の過去問データベース、一般受験対策の本など、書籍は多い。
平均 3.8 2020年に刷新される予定。また、近年はAO・推薦入試中心にTOEFL/IELTS/TOEICなど外部試験の導入が進んでいる。

東大の英語は標準的であり、奇問や悪問が少なくて模範的である。

大学一般受験の英語試験の概要

受験英語は単語・文法・和訳・英訳・和文要約に特化した試験であり、主語・目的語単位で採点基準も細かい。

受験英語で学ぶ文法力は実用英語にある程度は役立つが、実用英語はListeningのインプットに加え、Speaking・Writingのアウトプット、瞬発力、複合性と他の要素が多くあるため、受験英語は実用的でないと言われる所以である。

ただし、近年は一般受験の英語でも実用的な英語の要素が取り入れられつつある。

慶應義塾大学の総合政策学部・環境情報学部の英語、早稲田大学国際教養学部の英語、国際基督教大学の英語などはTOEFL・IELTSのReadingに近い。秋田国際教養大学の英語の試験は基本的にTOEFL・IELTSのEssay Writingと同じである。

比較的に英語が難しいと言われる上記の国際系学部だが、単に難易度の問題でなく、高校生が実用英語を勉強していないという側面も大きいだろう。

以上、各英語試験の特徴を10段階で数値化して解説した。