TOEFL iBT満点の人に勉強法を色々と聞いてみた!真摯な考え方に感動
TOEFL iBTで満点(120点)を取った人に会う機会があり、話を聞いた。
彼から話を聞いている時、とても賢い人という印象を持った。彼に一つ質問すると次々と話が流暢に出てくる。話のキレが非常によく、語彙や世の中に関するあらゆる知識も豊富な人物だった。
また、彼の英語学習者としての真摯な考え方や学習の取り組み姿勢はとても参考になった。
TOEFL iBT満点の人について
Zinan君
河南商报という地元の新聞に紹介されている。
→ まずは自己紹介してください
中国の北京から南の地方にある鄭州市(Zhengzhou City)出身です。23歳です。母語はMandarin(中国語)です。
ドイツで学部・修士を含めて4年間既に勉強しています。教授の研究生として、機械学習(Machine Learning)のアルゴリズムをテレコミュニケーションに応用する研究をしています。
趣味はアニメや漫画を見ることです。ワンピース、食戟のソーマ、進撃の巨人を見ています。今回、日本に来たのもその影響です。歌うことも好きです。KGBのカラオケに行ったり、合唱団の中で歌ったりしています。
生い立ち、英語を勉強した時期など
→ なぜ、中国から出てドイツの大学に入学することになったのですか
大学では電気工学の勉強をしたい、そしてとにかく中国から出たいと思っていました。中国の試験重視の教育から逃れたいと思っていたからです。
アメリカの大学に最初は出願していましたが、途中からドイツの大学でも英語で工学を学べることが分かり、またドイツをエキゾティックに感じましたし、奨学金も取れたことからドイツの大学に行くことにしました。
→ 家族について教えてください
兄妹はおらず、一人息子です。
母親は職業学校で先生をしています。
父親はフリーランスで輸出入の仕事をしています。以前は学校では英語の先生でもありました。
しかし、父親から英語を教わることはほとんど無かったです。代わりに12歳くらいの頃からアメリカのフレンズというシットコム、その後は映画を見るようによく言われました。
字幕は一切なしで、シーンや文脈からの推測をするようにも言われました。
ただ、きちんと集中的に見るようになったのは14歳位からです。
→ 12歳までに何か英語の勉強はし始めていましたか
小学校で10歳くらいから英語の教育が始まりました。ただ、語彙とリーディングの勉強だけです。
現在の中国では7歳から英語の教育が始めています。教育方法は少し変わりましたが、未だにリーディングとライティング中心だと思います。
TOEFL iBTの受験について
→ いつTOEFL iBTの試験を受けましたか
2011年8月27日、17歳で受けました。海外の大学に出願するためでした。その時は満点でした。
2回目に受けたのは2015年で、修士課程の出願のために必要でした。116点でした。その2回です。
※ 帰国子女でなく、非英語圏にて英語の勉強をし、17歳で満点(120点)を取るのは筆者からすれば怪物である。
→ どのくらいの期間、準備しましたか。
4ヶ月くらいです。TOEFLを教えている予備校に行きました。すごい良い女性の講師に出会いました。
その先生ととても仲良くなり、またTOEFLとSATを満点取った同級生とも知り合いになり、のちにオンラインのコンサルティング予備校を一緒に立ち上げました。
最初はボランティアでコーチングと授業を提供していましたが、後に規模が大きくなり、スタッフと生徒が大幅に増え、本格的に法人化しました。
その会社は規模が大きくなり過ぎて2年くらいで離れました。そして、別の友人が既に上手く事業化していたコーチングだけに集中する仕事に携わりました。
コーチングだけに特化した理由は、中国では親が教育に関して子供にうるさく言いすぎる場合が多く、正しい方法論を身につけさせるコーチングの必要性を大きく感じていたからです。
現在、中国ではTOEFLやSATの資格試験の予備校がかなり大きな産業になっています。
TOEFLの対策・勉強方法について
→ どのように準備しましたか
TOEFLは試験テクニックもあります。しかし、私が信じるもの、私が伝えたいものは英語の潜在能力(capacity, capability)の伸ばし方、英語の学習の方法論についてです。
TOEFLは英語力を伸ばすために本当に良い試験だと思います。いつか社会に出た時やアカデミックな場面で大変役に立ちます。
中国でも試験テクニックを重視する人はいますが、良いとは思いません。
英語学習で大切なことは自分の快適な居場所から出て、自分に挑戦し続けることです。
(Getting out of your comfort zone and challenge yourself)Reading, Listening, Speaking, Writingが混ざり合ったintegratedな環境の中で、常に自分のレベルより少し上のレベルに取り組むことです。
人はフラストレーションが溜まること、苦しくなる(distressed)ことを嫌がりますが、自分にあえて負荷をかけることです。
なるほど、comfort zoneに出ることを具体的に、TOEFLを勉強していた時に関連させて教えていただけますか
予備校にいた頃は4000単語ほどの語彙の本を見ていました。本当に必要だったのは2000単語ほどだったと思います。専門用語の名詞は気にせず、形容詞、動詞、副詞などを中心に学んでいました。
しかし、単にそういった一般的な単語を覚えたのではなく、「話す」・「書く」と使える段階にまで持っていくようにしていました。
また、この勉強だけに限りませんが2週間後くらいに見直して復習していました。
脳はコンピューターに例えると一時的に記憶するキャッシュ(cache)のようなもの。ハードディスクに保存するには時期をおいてもう一度復習することが大切です。
→ 他にどのような勉強をしていましたか (欲張り)
ReadingとListeningでインプットした内容をSpeaking、Writingのアウトプットにする練習をよくしていました。
インプットした話を他の人に再び話していました。
単に読んでいるだけ、聞いているだけのインプットはつまらないです。
インプットに対する自分の意見をアウトプットし、他人と共有することはとても面白いですし、意味のあることです。
→ ReadingやListeningで具体的にしていた学習法はありますか
問題を解き終わった後、どの問題が正解で不正解だったのか確認をしましたが、間違えた問題に対してどの選択肢が正しかったかはすぐに確認しませんでした。
どの選択肢が正しかったのか、なぜ自分の初めに選んだ選択肢が間違えで、別の選択肢が正しいと言えるのか、何日か考えるようにしていました。
答えが分からない状態をあえて自分に課し、苛めた訳です。
→ Speakingの準備で特にしていたことはありますか
試験と同じように練習しました。問題を解くときに1回だけ録音をしました。
解き始めは1題のみ、のちに1日で6題を解くようになりました。
たとえ、全然話せなくても、少しの言葉しか出なくても録音し続けました。
できなかった時は自分への辱め、罰として。
中国では良い回答ができるまで何度も録音をする人もいますが、私は1回限りの練習を大切にする必要があると思います。
考えて見てください。
ヨーロッパのバーやパブで知り合いやビジネス関係の人たちとネットワーキングやソーシャルをしている時に、自分のことを話す時間は10秒あるかどうかです。
そういう場で人の繋がりを作って行くのが西洋的な文化であり、その10秒で自分の印象が決まってしまう大事な瞬間です。
だから、わずか15秒で考えて45秒間話すという、1回限りの本番形式のspeaking練習は大事だと思います。
-> 14歳から本格的にドラマや映画での英語を学んでいたとのことでしたが、それでTOEFL高得点を取るには十分でしたか
先生からOral Englishに高い評価があり、自信はありました。
→ それでWritingは苦戦しなかったのですか、どう対策したのでしょうか
中国語、おそらく日本語のwritingもどちらかというと修辞的(rhetorical)なことが大事になってくると思いますが、英語ではロジカルであることや立論(argumentation)の方が大事にされています。
なので、私は映画やドラマなど、音から学んだアウトプット力とTOEFL Writingのギャップを埋めるために論理的に、詳細にwritingするトレーニングに集中しました。
例えば、essayの各パラグラフではお題に対してそれぞれ違う立場の人の視点から説明していました。
『週に4日間働くべきか、5日間働くべきか』というお題では労働者、雇用者、政府のそれぞれの視点から主張を書いていました。
→ 何か教科書は使っていましたか
TPO(TOEFL Practice Online)を使っていました。中国版ですけどね。
TOEFLで難易度が高いと思うセクションと問題の種類について
→ Reading, Listening, Speaking, Writingとありますが、どのセクションが一番難しいと思いますか
やはりSpeakingが一番難しいセクションでした。初めて試験を実際に受けるまで、『頭が真っ白になって何も言うことができなくなったらどうしよう』と思っていました。
→ Speakingの問題の中ではどれが一番難しいと思いますか
Question 1と2のIndependent Tasksです。欧米の人たちと違ってアジア系の人たちは自分の意見を言うトレーニングを学校でしないので、やはり自分の意見がなかなか出てこなかったです。
(全然そのように見えないので、ドイツの大学に入ってからも色々と研鑽を続けていただのだろう。)
→ SpeakingのIntegrated Tasksの中ではどれが難しいと思いますか
Question 4です。アカデミックでreadingとlisteningの両方を含むからです。言い換えと情報をまとめること(paraphrasing & synthesizing)がとても難しいかったです。
特にReadingでは150 wordsほど読むのに、回答では1行ほどでコンセプトを要約するのは難しいと思います。
ただ、後にこの技術はとても役に立つと思いました。大学で教授との打ち合わせや会議で複雑なことをその場で要約する機会がありました。
→ Speakingのサンプル回答をもらうことは可能でしょうか
いいえ、敢えてやめておきましょう。かつては自分の生徒に回答を配布していました。ただ、自分は早口なため、回答のスピートが早いです。
そのため、聞いた生徒がこのレベルには届かないという印象を持ち、諦めてしまうことがありました。公式のサンプルが出ているはずなので、それを参考にして頂きたいです。
将来に関して
→ 将来はどうしたいですか
将来は機械学習だけでなく、大学で培った技能を生かして色々な分野で活躍したいです。
大学で培った根本的な数理的技能を使えば、様々な分野で素早く適用することができると考えています。
→ 最後にETSの統計結果では中国の平均点は78点となっています(日本は71点)これに対して何か意見はありますか
統計的に言えば、母集団の分布状況が分からないので、何とも言えません。
ただ、自分が中国人の生徒に教えていて気になるのは、原因と結果が逆になっている点です。
今の中国では良い大学に行きたい→点数を上げたい→英語を学ぶという人が多いです。
そのため、一部の受験者はお金を使って良い先生と教材を集めれば、問題は解決するはずという態度の人たちもいます。そう、ドラゴンボールを集めれば願いが叶うかのように。
しかし、本来は純粋に英語力を上げたいという動機が先にあり、英語を真剣に学ぶことでスコアアップに繋がるべきです。
→ 以上です、ありがとうございました
You are welcome! 日本の受験者にとって私の話が少しでも役立てば幸いです。
以上、実は2時間近くに渡って、色々と答えてくれた。
全体的に非常に有用な考えを聞けたと思う。また、単に真面目な優等生などではなく、しっかり自身の考え方を持っていて、逞ましく感じた。
真摯に答えてくれた彼に心から感謝したい。