正規・交換留学生の就職活動:経験者から5つのアドバイス
正規留学、1年間の交換留学、もしくはTOEFL/IELTSなどの英語を勉強した生徒向けにお勧めの就職活動について5つ紹介したい。
また、留学経験者のコミュニティは少なく、就職活動について一定のノウハウが共有されていないので、困っている学生が多い。特に、正規留学と3年次に交換留学をする学生は大学3年生の冬に始める日本での通常の就職活動ができないので悩みが多い。
筆者ももし学部生に戻れるなら別の行動を取っていた。ただ、下に紹介する方法は一つの参考例であり、人それぞれに合わせた色々なスタイルがある。
本記事では日本と海外で就職活動する場合、どちらも考慮して書く。
筆者が卒業した時の就職活動
経済学・商学の学位、2年間の留学経験、TOEFL 100以上・TOEIC 950以上、一般的な数学とITの知識を持った状態だった。
筆者はキャリア志向を持っていなかった。(学部1年生の頃はあった)*1
*1:欧州で友人が古都の街で宿泊施設を経営していて、彼の結婚式に参加した。外国人の観光を手助けし、街に貢献していることを家族や親戚から誇りに思われ、立派に祝福されている友人を見た。それから自分は本当に働きたい仕事、ポジティブなこと、貢献できる仕事に就こうと思った。
沢山の人気企業を応募することはせず、仕事内容と会社を細かく調べて、本当に興味のある求人だけに応募した。
某大手スマートフォンITメディア企業 | 1回のオンライン面接と対面面接があった。対面の面接はその会社が契約している外資系コンサルタントと日本語と英語の面接でビジネス、経済、グローバルの知識についてだった。内定を受けた。 |
ベンチャー系のデータサイエンス企業 | 2回とも直面接で採用された。統計を勉強していたので、将来性を評価された。内定を受けた。 |
マカオの会社 | あまり詳しく書けないがマカオに滞在する富裕層が顧客のビジネスだった。内定を受けた。 |
語学学校のエージェント | 1回面接を受けて内定を受けた。ただ、せっかく経済学を海外で勉強したのだから、それを別の会社で活かした方が良いと担当者に言われた。 |
某有名アパレル企業 | 海外マーケティング顧問と知り合い、コミュニケーション能力を評価してもらい、入社の誘いを受けた。 |
その他、2つほど内定を受けた。不合格だったのは1つか2つだったと記憶している。合計で10社も受けていない。
最終的に、上記のうちで一番早く内定を出してくれた会社に就職することを決め、他は辞退した。
就職活動時、ビジネススーツは着ていなかったが、落ち着いた感じの服装は着ていた。
筆者は海外で正社員として働いたことはない。カナダにいた時にアルバイト経験と就職活動の経験があるくらいである。
海外の就職活動に役立つ知識を当時は持っておらず、カナダで実際に就職活動を始めた時には既にかなり出遅れていた。
そのため、自分と同じように海外で就職活動をすることに興味がある人のために本記事を書いているが、筆者の海外の就職活動における知識・経験は限定されている。
お勧め1:大学1年生の時から履歴書(Resume)を作る
既に大学生であり、現時点で書いたことがない、書こうとしても思い浮かばない場合、まずは『自分がその状態にあること』を認識することが大切である。
今の時点で書けない場合、そのままでは就職活動時になっても中々書けない可能性が高い。
他人にアピールできる履歴書を作るために、普段からコツコツとアピール内容を思い出す度に書き留めておき、またそれを意識して客観的かつ分かりやすい活動実績を地道に積み重ねておく。
かくいう自分も大学3年生で留学生経験者向けのキャリアフォーラムに出る時に、初めてこの重要性に気が付いた。
一応、留学経験、成績、ディベート大会の戦績など、書くことはあったが、1年生時から意識的にしていれば良かった。
北米の学生はそもそも大学進学の準備で書類選考、面接対策は慣れており、その親の世代も同じなのでそういうことを準備する習慣・意識づけはできている。
どういうアピールを意識すると良いのか?
基本的に『優秀』であり、『独自性』のある人材を企業は求めていると考える良い。
『優秀さ』とは、理解力、処理力、暗記力、外国語運用能力、分析能力、表現力などである。
『独自性』とは、興味・好奇心、経験、考え方、行動力、目標や計画性、実績、出自など、他の人とは違った属性である。
商品を開発・販売するとき、『ある特定の市場』で『非常に競争力のある』ことを目指すことはマーケィングでよく言われる。
労働市場も同じで、労働者としていかに自分が一定の分野で、活躍できるかをアピールすることである。
特に、近年はグローバルな人材を企業は欲している。例えば、違う人種、違う文化、違う歴史、違う教育、違う生活で人生を過ごしてきた多様な人材をアクセンチュアやグーグルなどの世界的な企業が重用している。
英語のResumeと日本語の履歴書の両方を用意
英語で履歴書をResumeと言う。海外の企業も受ける可能性があるなら、英語と日本語の履歴書を両方用意する方が良い。
書き方や視点が違うので、両方書くとブレインストーミングが捗る。(レジュメは日本の履歴書に比べると書式の決まりごとが少なく、アピール方法は英語の履歴書の方が考えさせられる。)
参考のために自分のカナダの母校のStudent ServicesのHPで公開しているレジュメに関する講義と、サンプルのレジュメを見て欲しい。
学生のサンプル・レジュメ
Resumeを1ページか2ページの長さにするかという論争があるが、余程の実績がない限り1ページにまとめておくのが無難だろう。
欧米式の良いレジュメの根本的なコンセプトや原則的の理解、作成の細かい技術はResume: The Winning Resume を読むと良い。理論的でもあり、実践的でもある。
添削は外国人の友人やFiverrで添削の経験者に格安で依頼すると良いだろう。
カバー・レターは具体的に応募する段階で用意する
カバー・レター(Cover Letter)とは挨拶状、自己推薦状、動機書を一つにしたような文章のことである。欧米ではResumeとCover Letterをセットで送ることが一般的である。
良いカバー ・レターの書き方については引き続き、Resume: The Winning Resumeを参考にすると良い。
私の場合、テンプレートを当てはめるのではなく、採用者の心に届くように具体的かつ的を得るような内容を書くことを心がけた。
先ほどの、『優秀』と『独自性』をできるだけカバー・レターでも出すようにした。
そのため、会社のHPや巷の評判サイトから製品に調べたり、社長や幹部のインタビュー記事、会社のTwitterやYou Tubeなどにも目を通すようにしていた。
LinkedInのアカウントを作成して充実させておく
LinkedInは欧米の就職活動の主要なSNSであるのアカウントを作成して充実させておくと良い。年を増すごとに就職活動のSNS利用が活発化しており、この傾向はしばらく変わらないと思われる。
お勧め2:ビジネス・ネットワークを作る
“It’s not what you know, but who you know.”
何を知っているかではなく、誰を知っているかだ。
ビジネスにおける繋がりをビジネス・ネットワークまたはプロフェッショナル・ネットワークと言う。ネットワークを広げることに取り組むことをネットワーキング活動と言う。
日本でも役に立つし、欧米では特に大事になる。ある調査では80%以上の求人が
- 日本であれば『学歴』+『新卒』+『将来性』が重要な選考基準と言える。
- 欧米は『学歴』+『ネットワーク』+『経験・実績』が重要な選考基準と言える。
自分が応募する会社の関係者と知り合いになれば、”紹介者”(Referral)として先ほど述べたカバー・レターに名前を載せても良いか、依頼する。
もし、承諾を得られれば非常に強力なCover Letterになる。選考に通る可能性はかなり高くなる。(詳しくはここを参考にして欲しい。)
ネットワーキング活動は窓口は色々と考えられる。できる限り公式なイベントよりもアットホームな感じのイベントの方が企業の人に話しかけやすい。
- Facebook、LinkedIn、Dot.などからイベントを探して参加する
- 興味のある業界や企業のHPなどからイベントを探して参加する
- キャリアフォーラムに参加して担当者に話しかける
- 大学の実施するキャリアフェアなどに参加する
- インターン系のイベントに参加する
- ボランティア行事に参加する
- 部活・サークルのOB・OGから話を聞く
学生用の名刺を作っておこう
現在はオンラインで1枚5円くらいで作成できる格安のネット印刷業者が多くある。(例)ラクスル
基本的には個性を主張し過ぎないデザインで、表面に日本語、裏面に英語の紹介があると良いだろう。
ネットワーキングで会社の担当者と話す時、機会があれば名刺交換をしよう。
それをしたという事実が相手とのネットワーキングの一部であるし、相手の印象にも残りやすい。
お勧めの会話内容
自然な形で知り合いになり、自然な会話を心がけるのが良い。
①導入部分
- 簡単な自己紹介(大学、学部、研究、ゼミ、趣味など)をする
- その場の雰囲気についてアドリブで話す (イベントの雰囲気、天気など)
②自分について話す
- 自分がどういった仕事に興味があるか伝える
- (事前に調べる機会があれば)相手の会社の製品・サービスにどう興味があるか伝える
- 長期的な自分の目標や計画
③相手について聞いてみる
- ビジネス内容について聞く
- 業務内容について聞く
- 顧客について聞く
- 技術について聞く
④ネットワークを広げる
- 名刺を交換する
その他の参考)30 Brilliant Networking Conversation Starters
お勧め3)インターンなどで実務経験を積んでおく
実務経験を積むため、長期休みの時にインターンシップに参加するか、休学して3ヶ月から半年ほどの実務経験を積むと良いだろう。多くの企業、政府、国際機関がインターンシップを募集している。
- 自分の興味のある業界や企業のHPを調べる
- 国内のインターンシップであればPasonaやProject Indexなどで検索が可能である
- University of GenevaのHPには国際機関のインターンシップ情報が載っている
- 海外のインターンシップに関してはLinkedIn、InternshipPrograms.com、Internships.comなどに情報が載っている
仕事に関して、特に海外の場合は自己アピール、自己責任、上司や同僚とのコミュニケーションが大事である。量が多くてできない仕事はできないと伝える姿勢も求められる。
インターンシップ中は、自分がどういった業務をしているのか、何を達成しようとしているのか、常に意識し、ノートに残しておこう。そこで得た経験と実績を就職活動時にアピールする。
履歴書でもResumeでもこれまでの実績を書く部分がある。特にResumeにおいては、どのような経験をし、何を成し遂げた・得たのかをアピールする必要がある。
お勧め4)対面・電話・メールなど企業に自分から近づく
求人サイトや一般応募は多くの人が利用していて、一元的に見られる書類上ではなかなか印象を残すことができない。
- 会社のイベントやキャリアフォーラムなどで自分の興味のある人たちに自分から話しかける
- 電話して採用に関して聞きたいと尋ねる
- それも無理ならeメールする
など、勇気を出して自分から近づいていくことが大事である。特に自分から企業に電話をかけて採用機会について尋ねることを英語では”Cold Calling”と言う。
対面・電話・メールする前に、その企業のサービス、強み、競争相手、求人情報、 経営体制など可能な限り調べておこう。
また、逆に自分がどのようなことを聞かれても良いように、仮想質問を50〜100ほど準備して答えられるようにしておこう。自分の興味のある業務、将来の展望、強み・弱み、過去の実績、市場に対する考え方などである。
お勧め5)じっくりと探し、本当に情熱を注げる仕事に就く
じっくりと時間をかけて就職活動をすることはキャリアのためだけに自分の人生を捧げているように感じるかもしれない。しかし、むしろ逆であり、良い人生のために良い仕事をしたいからである。
大学3年生や4年生になって短期決戦で就職活動を始めると、仕事に関する知識が不足していてどういった業界で働きたいか分からなくなる。また、アピール材料不足、ネットワーク不足であれば選考で不利に陥るかもしれない。
そして就職活動での人間関係もビジネスライクだけになり、働くことに魅力を感じることが難しく感じるだろう。
長期的にコツコツと準備する中で自分が本当に働きたい企業をじっくりと探し、自分と仕事の価値観が合う人に出会うことを楽しんでほしい。
留学に行くような人は多かれ少なかれ、人生にこだわりを持っている。本当に自分が勤めたいと思うような企業でないと、仕事をずっと続けるのは難しいだろう。
もちろんコンサルティング、金融、商社、広告、IT、人材、半導体の分野で活躍する超一流企業と呼ばれるような会社でも良い。しかし、私は自分のやりたい仕事に妥協してまで、そういった企業にどうしても就職する必要は無いと思う。
自分に関して言えば、これまで働いてきた(大企業ではない)会社の業務にやり甲斐を感じていたし、同僚も自分と同じ価値観を持っている部分が多かった。たから、一生懸命に仕事できたし、その経験を誇りに思っている。
情熱を持てるのであれば地元のカフェで働いても良いだろうし、またはアフリカの国で教育発展のために先生として従事しても良いだろうし、マザーハウスの山口絵理子さんのようにアジアの発展途上国でバックを生産しても良いだろうし、孫正義さんのように留学後に起業しても良いだろう。
留学生の持つ典型的な5つの質問に答えてみる
正規・交換留学生が就職活動同時に悩む典型的な5つの質問に答える。
Q1. 交換留学の場合、2年生でするべき?3年生でするべき?
私は3年生での留学を勧める場合が多い。1、2年生で英語と専門科目をしっかり学び、3年生で留学をすると向こうの大学の3、4年生用の専門科目をしっかり学べる。一方、2年生で留学をすると1、2年生用の専門基礎科目しか取れない場合が多々ある。
しかし、一概の答えはなく、その人の状況による。かつては3年生に留学すると、4年生に帰国して就職活動に不利とよく言われていた。しかし、現在は留学生のためのキャリアフォーラムやイベントが多く、企業がグローバルな人材を欲しがっているのでわざわざ場所を設けてくれる。
また、公の募集を過ぎていてもお勧め4にあるように自分から企業とコンタクトを取るくらいの積極性を見せると良いだろう。
Q2. 日本の企業と海外の企業、どちらがお勧め?
人によるだろうが留学経験のある人は日本企業であったとしても風通しの良い、比較的リベラルな社風の会社を好むと思う。
英語力やグローバルな経験を活かして、また業界の経験がなくても将来性を見越して採用してくれる日本で就職活動を有利に進めるのも有りだろう。
一方で、外国人になるので海外で採用を獲得するのは難しいが一般的に給料・福利厚生も良いし、職場は責任範囲のある分、やりがいがあると言われている。
Q3. 企業言語が英語の場合に必要な英語力
もし、企業言語が英語の職場で働く気持ちが強いのであれば、TOEFLで100以上(特にListeningとSpeakingは各25点)かIELTSで7.0以上は最低でも取れる英語力を持っておく方が良い。TOEICは易しめなので、お勧めできない。アルバイトでも働くにしても、TOEFLで90点以上の英語力は必要である。
Q4. どのくらい礼儀正しい身なりや行動をするべきか
一般的に言って、伝統的な日本の企業ほど行儀よく行動することを求め、外資系の会社ほどコミュニケーション能力の高さが求められるだろう。イベントやキャリアフォーラムに参加して企業の人に話を聞けば、どちらの要素の方が強いのかはっきりと分かる。
どちらが良いと言う一様の答えはなく、自分の興味のある企業と、自分が自分自身をどう見せたいかによるだろう。
ビジネススーツに関しても同じであり、着るべき・着ないべきの話ではなく、自分がその企業の人にどう見られたいか、他の要素とも合わせて、全体的に考える必要があると思う。しかし、少なくても高いスーツやビジネス用品を着る必要は全くないないだろう。
参考)海外志向の男子学生・新社会人にこそオススメしたいビジネス用品の準備
Q5. 大学の成績は就職に関係あるのか
日本・海外ともに成績は悪くてもマイナス材料になることは基本的にない。しかし、良いとアピール材料として使える。また、大学で学んで得た知識や思考力は社会人になってから役に立つ。そのため、しっかり大学で学んで良い成績を残すことをお勧めする。
以上、正規・交換留学生にお勧めしたい就職活動のアドバイスだった。
Good luck!
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