国際バカロレアのディプロマ・プログラム(IBDP)について分かりやすく簡単に解説
なかなか分かりづらい国際バカロレアのディプロマ・プログラム(IBDP)について分かりやすく説明する。
国際バカロレアのディプロマ・プログラム(IBDP)とは
国際バカロレア資格(IBDP)について誤解を恐れずに簡潔に書くと
国際的に使える大学入学資格を取得できるプログラムである。
(※日本の一般的な高校卒業では英国・豪国の大学入学資格を満たさない。)
プログラムを通して国際的な教養を備えた人間を育成することが目標であるために国際化・異文化の理解、知識と思考力、思いやりと探求心などを養成するプログラムである。
(知識詰め込み型の日本教育と『教育方針』が非なるもの)
国際バカロレアの認定校(IB認定校)ではIBのDP資格を取得するためのカリキュラムを提供する。
Diploma資格と最終成績(45点満点)がセット。資格取得のためには24点以上を取得する必要ある。
(また点数が高いほど、大学受験に有利に働く。)
16歳~19歳までを対象にしている。
普通の高等学校と根本的に何が違うのか
違いを理解するために大切なのは資格取得のためのカリキュラムであるかどうかである。
- 日本の普通の高校
後期中等教育を施すための学校 → 卒業すれば日本の大学入学資格が手に入る
試験内容・評価方法・教育の方法はある程度の決まりはあるものの、それぞれの高校がある程度、裁量を持っている。(学校によって歴史のカリキュラムが違う、成績のつけ方が違うなど) - IB認定校
IB Diploma資格を取るための学校 → 取得のために独特かつ高度なカリキュラムを提供する
(例えるなら、自動車の免許を取得する教習所のようなもの)
具体的な指導方法は各校によって差はでる。ただ、在校生のIBの最終成績の平均点は学校の評判の関わる。
そのため、IB認定校は良いカリキュラムを提供して自校の生徒に良い最終成績で資格を取らせようする。
他にも知っておくと良い点は
- 資格取得の難易度に学校間の違いはない。評価方法は統一されており、一貫性のためにモニタリングされる。
- 各国でIBディプロマ・プログラムに対する評価は高い
- IBのプログラムの魅力から人気が高まり、IB認定校が世界的に(日本も含め)増えつつある
(2014のインターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢、2015年の東京都立国際など) - 国内の国際バカロレアの認定校の一覧を確認できる
- 1968年にスイスで設立された非営利組織によって運営されている
カリキュラムと成績について
- 6つの教科グループから1科目ずつ選択し、合計6科目を2年間で学習する。
ただし、「芸術」のグループは他のグループからの科目に代えることも可能。 - higher level(HL)から3〜4科目、standard level (SL)から2〜3科目を取る
- HL科目は240時間、SL科目は150時間学習する。
HLはSLより難易度が高く、範囲も広い。途中でHLからSLに変更できる場合あり。 - 進学時、大学や学部によって、HL/SLの指定や科目のスコアに要件があるので要注意。(特にトップ大学)
- 2年間の最終成績は2年間で45点満点。原則として24点以上を取得する必要がある。
- 評価方法は外部評価(国際バカロレア試験等)と内部評価(レポート、プレゼンテーション、作品など)
- 6つの科目に加えて、3つのコア科目(EE,TOK及びCAS)を学ぶ必要がある。
6科目につき各7点(計42点)+TOKとEEの評価結果の組み合わせに応じて最大3点(CASは評価対象外) - IB Predicted Grades(見込み点)が2年間の途中にある評価を元に何回か出される。
卒業見込み状態での大学出願はこのPredicted Gradesで出願することになり、実質的に非常に大事な要素。
6つグループ(教科)
- Studies in language and literature ー言語と文学(母国語)
- Language acquisitionー言語習得(外国語)
- Individuals and societiesー個人と社会
- Sciencesー理科
- Mathematicsー数学
- The artsー芸術
higher level 3~4科目は理系・科学系科目をオススメ
理系・科学系科目は主観がない科目なので事前の予習ができて努力すれば取れる。また、大学の受験選択肢も広がるし、社会の需要も高い技能である。
Individuals and societiesはeconomicsが一番社会科学的で事前準備もしやすい。businessに興味あればeconomicsの知識を活かして大学で専門的にすれば良い。
Sciencesはphysicsとcomputer science。physicsを選択する理由だが、数学と同じく理解が大切な科目であり、数学との相乗効果が出しやすい。一方、他科目のbiologyは暗記が多く、chemistryも半分暗記、半分理解が必要な科目。computer scienceはこの世の中で今後最も実需のある技能であり、役に立つし、事前に学べる。
Mathematicsはmathが好きならhigher level、苦手ならstandardにすると良い。
上記の中から、自分の興味・大学での進学希望に応じて1つをstandard levelにする。
standard level科目はIB Japanese A、English Bをオススメ
Studies in language and literature は母国語なのでもちろんJapanese Aになる。母語なのにHLでない理由は、SLよりも高度な読解力、意見を論理的な文章にまとめる能力が必要である点、大学受験で優遇されにくいからである。
Language acquisitionはEnglish Bをオススメ。他の科目も英語で学ぶので英語力をできるだけ身につける方が良い。
3つのコア科目
- EE (The extended essay) 【課題論文】
履修科目に関連した研究分野について自分のテーマを見つけ、探究し、4,000語で論文を作成 - TOK (Theory of knowledge) 【知の理論】
「知識の本質」について考え、「知識に関する主張」を分析し、知識の構築に関する問いを探求する。 - CAS (Creativity, activity, service) 【創造・活動・奉仕】
創造的思考を伴う芸術などの活動、身体的活動、無報酬での自発的な交流活動といった体験的な学習に取り組む。
詳細は文部科学省のHPを参考、教育課程は都立国際のIBを参考
卒業後の進路について
IB Diplomaとその他各国の教育制度を比較する際、①選択肢の幅、②有利性について、考えると良い。
卒業後の進路の選択肢の幅は広がる
日本の高校卒業ではイギリスやオーストラリアの大学の入学資格を満たさない。そのため、大学付属カレッジのファンデーションスコース(大学準備コース)にまず入学する必要がある。
イギリスではGeneral Certificate of Education (GCE) Advanced Level、略してA Levelという課程で科目数を3〜4科目に絞り、大学の専門基礎課程まで学ぶ。オーストラリアも同様である。
一方、IB DiplomaではHLで大学の専門基礎課程に相当する内容を学ぶので、イギリスやオーストラリアの大学の出願が可能である。
カナダの大学は日本の高校でも、IB Diplomaのどちらでも出願できる。アメリカの大学の場合、トップ校がIB Diplomaとは別に米国の統一試験であるSATやACTのスコアを要求する場合が多い。
日本の大学受験資格について誤解が多いが、基本的には一般受験もAO・推薦も受験できる。(※一条校か国際的な評価団体(WASC、CIS、ACSI)に認定されたインターナショナル・スクールの場合)帰国生入試やIB利用入試だけに限られない場合がほとんどであり、選択肢は日本国内の学生より広い。
IB Diplomaが大学進学で有利になるかは最終成績次第
『優秀な最終成績を残せれば』、Harvard、MIT、Oxford、Cambridgeなど超名門校に行き易くなる (都立国際のHP参考)
目安として日本国内のトップ私大(慶應義塾、早稲田、上智)は30-35点、海外の名門大学は35-40点、超名門は40-45点を欲しい。特に慶應義塾大学と上智大学はIB利用入試を設けており、IB出身の生徒を欲している。
ただ、『優秀な最終成績を残せれば』という条件を満たすのがなかなかに難しい。カリキュラムはかなり高度(豊富かつ難易度高め)であり、普通に成績を取ること自体が難しい。
欧米のトップ大学の学生がしている学習量と同じである。勤勉であるだけでなく、タイムマネジメント力なども求められる。
下手すればディプロマ資格を取れずにIB Certificate(証明書)で終了する可能性がある。Certificate単体では大学受験資格を得づらく、基本的には日本の高校卒業と同じになる。(※一条校か国際的な評価団体(WASC、CIS、ACSI)に認定されたインターナショナル・スクールの場合)
Certificateの場合、イギリス・オーストラリアの大学の直接入学は不可である。その場合、米国の統一試験であるSATやACTを受けておく方が良い。